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えんのしたの声


☆ 番 外 編 ☆
忘年会


今日は野球チームの父兄の忘年会。



最初は遠慮しがちな親たちも、酒が入るといろんな意見を出し始める。

ある子の母親が苦情を言い出した。



「うちの子は、レギュラーになれません。決してレギュラーの子よりも実力は劣ってないはずです。」

かなり不満が溜まっているらしい。



コーチに食ってかかる。

「まぁ まぁ まぁ。」

ナダメ役の父兄が割って入った。



「うちの子はこの前シゴかれて、ごはんも食べられない程でした。」

「うちはコーチが怖くて、練習に行きたくないと。」


どんどん出てきた。





佐久間コーチは渋々立ち上がる。

そして重い口を開いた。



「私は試合に勝つことが全てではないと思ってます。

ただ、やるからには勝つことを目標にしています。



コーチの立場でみているといろんな事が見えます。



試合中の同じ一本のヒットでも、チームの雰囲気をガラッと良くする子もいます。

日頃から一生懸命に努力し、みんなから信頼される子は、そんなヒットを打つことが出来るのです。



私はただ野球が上手いとか下手とかでなく、そんなプレーが出来る子になって欲しいと願ってます。

そしてそんな選手が揃えばきっと勝つことが出来ると考えています。



それには時間がかかりますので、もう少し暖かく見守って頂きたいと思います。」



拍手が起こった。

佐久間コーチの言葉は奥が深かった。



アルコールの入った親たちに、どこまで通じたかは定かでない。

しかし、誠の父の豊にはしっかり届いていた。



家に帰り豊は誠に言った。

「佐久間さんって良いコーチだな。」

「そぉ? ちょっと怖いけどね。」



子供たちには怖いばかりのコーチだった。





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